20120124井上x山野

「ウヨクかと思ってたのに、あんたはサヨクだな!」

 井上純弌の口から飛び出した、この山野車輪評が多分この日のイベントのすべてを言い表しているのかもしれません。

 というのも、なんと今回のイベント「ボク、働きたくないんですよぉ」という山野さんの衝撃告白から開幕したからであります。

 山野発言の真意は「たとえ仕事をしなくても、ベーシックインカムで生活が保証されるような世の中になってほしい」というもの。「マンガをヒットさせるためにアクセクして、食うためだけに描きたくない作品を書かねばならないような状況はもうウンザリだ」という、彼の今の感慨から出た言葉でした。

 ただ左翼的な理想としてよく語られるベーシックインカムを、若手ウヨク代表の一人と目されている山野車輪が強く主張するものですから、場内は騒然(笑)。

 そもそもは、このイベントに先立って、山野さんがTwitterで「食えないわ、俺」とぼそっとつぶやいたのを井上さんが覚えていて、「『嫌韓流』百万部売っといて、食えないわけないでしょう!」と一発目にカマした結果、山野さんの口からポロッと出たのがこのボヤきだったのですね。

 ちなみにこの思想、山野さんはガンダム原作者の富野由悠季さんから学んだといい、「あの人はすごく正しいんです!」と、このあとひたすら「トミノ理論」の信奉者として語り続けます。

 右翼左翼いう以前に、君はガンオタか!(笑)

 一方、井上純弌は酸いも甘いも噛み分けたオトナです。
 フィギュア会社のシャチョーとして今なお数千万円の借財を背負う社会人として、山野車輪に滔々とお説得する立場に立ちます(笑)。

 「だーかーらー、あんた、面白いもの書けるんだから、もっとマンガ書けばいいじゃないか!」

 井上さんの悲鳴のような(でも笑ってた(笑))セリフが、結局、この日のメインテーマとなり、「山野車輪を如何にヒットマンガ家にするか」という趣向に転がっていくことに相成ったのでした。

 そもそも現在の漫画界には、ヒットを続けないと、マンガ家として生活ができないという現実があります。マンガを描くために必要な経費(アシスタントの給料や、仕事場を維持するお金etc)がずっしり作家の肩に載せらているので、雑誌連載分の原稿料だけでは、せいぜいトントンか赤字。
 
 それをきっちり回収して、人並みの生活していくために、結局単行本を確実に売らなければならない。これは、以前の井上さんのイベントでも何回か語られてきた話ですが、部数(と印税率)という身も蓋もない金額を根拠として示し、ではこの時代にマンガをヒットさせるのはどうすればいいか、またヒットするマンガとは何かという井上流の解剖へと突入。(そこには「中国嫁日記」を大ヒットさせた井上さんの「エッセイマンガ」ヒットの実証的ノウハウがあり、これはこれで聞きどころなんですが、このレポートでは割愛します。)

 人間は物語を認識するとき、ほとんど、キャラクターによって認識しています。
 だから、ヒットマンガというのはおしなべて「キャラ」の造形に成功している。

 実は『マンガ嫌韓流』が成功したのも、韓国自体を敵役キャラとしてを正面に押し出し、どれだけ嫌な連中であるか(その説に読者が同意するかしないかは別として)ーー敵役としてきっちり練りあげられたキャラとして韓国人を描き、“マンガの文法”にきっちりハメ込んでみせたから大ヒットが生まれたのだ! と井上さんは力説します。

 「『嫌韓流』以降の作品にはキャラが居ないの。だから売れないんだ!」
 そして、山野車輪という作家には、実はきちんとしたキャラクター造形の才能があるのだから、そちらの路線でマンガを描くべきだと井上さんは、山野さんにど偉い迫力で迫り続けます。

 でも、さすが山野車輪もお見事。
 ここから二枚腰三枚腰のネチ濃さを発揮、土俵際で粘りに粘る(笑)。

・キャラクターだけではないマンガもある
・同じマンガを3巻以上、描きたくない
・キャラマンガの極地である「●●●●●」(とある作品名・あえて伏字)を、読み続けていて(ただし
ずっと立ち読み)、どうしてもやめられない。「早く終わって欲しい」と思っている

 などなど、キャラマンガが書けない/書けない理由を上げて、ひたすらこまめに反駁し続けつづけるんですね。ーー何かもう終電の出たあと、怒涛の口説きを受けながら、如何に自分はホテルに行きたくないかを述べ続ける処女のようで涙ぐましかったです(笑)。

 ところが、この抵抗、井上さんにひとつひとつ丁寧に論破されていきます。
 こちらはトラクターでキャベツを踏んづけていくような、身も蓋もない蹂躙ぶり(笑)
 
・「進撃の巨人」は確かにキャラクターに頼らないマンガだが、その代償に▼×●*。
・作家は物語を始めたら終わりが見える。それが苦しくて、作品から離れる人もいる。だが、変わらず続いているものは面白いじゃないか!
・「●●●●●」(山野さんが挙げた↑マンネリキャラマンガ)「サイコーじゃないか! 誰も傷つかない、何かを経験しても、一切成長しない! 素晴らしいぞ!
」(disなのか褒め言葉なのか微妙な、しかし大絶賛)

 そして「人間はキャラクターに魅せられて物語を楽しむ」(「マンガにはキャラしかない」)という論拠のひとつに、中国で作られた反日映画シリーズが、なぜ人気があるのかという井上流の解説も加わります。ーーこれは、まさに見事な井上流人間論エンタメ論であり、山野さんサイドのテーマであるナショナリズムの問題にも関わる、今回の聞き所の一つでもありました。

 さらに、山野さんの新作「なるまん」の欠点について、キャラクター造形という観点からの批評を加えた上で、「あなたにはキャラクターが面白いマンガを描く才能がある」→だから描きなさいよ! とマンガ家・山野車輪に対する熱烈なラブコールを送り続けます。

 さて、この「公開処刑」…じゃなくて、熱烈な公開口説き落としには、客席も同意したようで、Live Wire名物の客席発言が連発。山野さん包囲網ともいうべき熱い突っ込みが、グイグイ浴びせられます。

 そして、ついには悪ノリした司会の弊社Iからも、山野さんの次回作に「ベーシックインカム・ト◯ノちゃん」というキャラクターが提案され、山野さんもおもわず「それは…か、書いてもいいですね…」と貞操の危機に(笑)。

 予想外の白熱に「言葉のド突き漫才」の様相となった井上純弐と山野車輪の初顔合わせは、ボリュームたっぷり、お笑いたっぷりの3時間強となりました。

 山野車輪が立ち読み続けている、30年近く連載が続く人気漫画は何か? 
 また、次回新作としてすすめられた「ベーシックインカム・ト◯ノちゃん」の秘密とは? 
 本当にキャラクターを造らなくてもマンガを職業としていく道には何があるのか?

 気になるあなたは↓のリンク先の映像で、ぜひ真相をご確認くださいませ。


 (レポート・スタッフY)



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